製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座(その11)

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どうも管理人です。製品含有化学物質担当になっちゃった人のための超初級化学講座の11回目です。今回は、臭素系難燃剤のお話です。

ええと、まずWikiでは、、、。はい、すみませんでした。

難燃剤は、文字通り可燃性のものに添加して、燃えにくくして、火災が発生しにくくしたり、燃え広がらないようにするための薬剤になります。ここでいう可燃性のものとは、プラスチック、ゴム、木材、繊維などです。

電気電子製品だとショートするなど故障による発火は考えられるので、安全性の観点から使用されます。ですがその一方、その有害性も指摘されており、RoHS指令では特定の臭素系難燃剤が制限されているのは、ご存じのとおりです。

難燃剤はリン系のものも多く使用されるようになってきていると思いますが、未だ多くの割合を臭素系難燃剤が占めています。特に電気電子製品においては多く使われています。

日本難燃剤協会

難燃剤は、RoHS指令などで制限されている臭素系難燃剤ばかりではありません。リン系難燃剤、無機系難燃剤などいろいろな種類があります。

日本には、難燃剤を製造したりその周辺技術を持った会社の方々が、日本難燃剤協会を作って活動しています。難燃剤に関する内容、資料なども掲載されているのですが、資料は、2012年以降の更新が止まっているのであまりい役に立たないかもしれません。

関連リンク集や会員企業さんのHPのリンクのほうが役に立つかな。

臭素系難燃剤の規制

臭素系難燃剤は、そのいくつかはすでに規制されています。

PBDE

まず、PBDE(Polybrominated diphenyl ethers)は、RoHS指令で均質材料中の0.1wt%に制限されています。
PBDEは、臭素の数は具体的に指定されていませんが、以下のような構造式を持ちます。

PBDEの構造式
wikiより引用

mとnは、1~5までの数字が入ります。

POPs条約においては、m+nの値が4から7と10が附属書A (廃絶)の扱いになっています。
日本語で書くと

  • テトラブロモジフェニルエーテル m+n=4
  • ペンタブロモジフェニルエーテル m+n=5
  • ヘキサブロモジフェニルエーテル m+n=6
  • ヘプタブロモジフェニルエーテル m+n=7
  • デカブロモジフェニルエーテル m+n=10

となります。

それじゃ、m+n=8と9はいいの?という疑問を持つ人がいると思います。答えは、まずそんな面倒なものを純度高く作る人はいないし、それをターゲットに合成しても、m+n=6とか7とか他の化合物も副生成物としてできてしまうので、実質廃絶の範囲に入ってしまいそうな気がします。

PBB

また、RoHS指令においては、PBB(Polybrominated biphenyls)もPBDEと同様規制の対象です。

構造式は以下のようになります。

PBBの構造式
wikiより引用

フェニル骨格が酸素を介してではなく直接つながっているのがPBDEとの違いです。

一方、POPs条約においては、x+y=6のヘキサブロモビフェニルのみが、附属書A (廃絶)の扱いになっています。

HBCD

HBCDは日本語ではヘキサブロモシクロドデカンで、以下のような構造式をしています。こちらの化合物も臭素系難燃剤として使われていました。

ヘキサブロモシクロドデカン

この化合物の場合、構造式の書き方にも色々あって一見同じものに見えないものもあるのでご注意ください。

この物質は、POPs条約において附属書A (廃絶)の扱いになっています。

日本:化審法

日本は、POPs条約に批准しているので、POPs条約において物質が追加されると国内法に落とし込まなければなりません。その国内法は化審法になります。従って、上記で説明したPOPs条約 附属書A (廃絶)にリストされている臭素系難燃剤は、化審法の第一種特定化学物質になっています。

EU

EUでは、 (EU) 2019/1021 がPOPs規則となっています。日本の化審法と同様、POPs条約で附属書A (廃絶)にリスト化されている物質はANNEX Iにあり、上記臭素系難燃剤は、全て載っています。

ANNEX Iにある物質は、製造、上市、使用が禁止されています(特定の例外を除く)。

一方、SVHCにはデカブロモジフェニルエーテルとHBCDがリストされており、制限物質には上の物質には特定物質としてはないオクタブロモジフェニルエーテルとPBBがリストされています。

色々変な重複してますね。まあ、規制の考え方が違うからでしょうが。最もEUのPOPs規則は、発効が2019年ですから後で出てきた規制ということになります。

他の臭素系難燃剤も規制の波がかぶるかも

今までの規制に加えて、他の臭素系難燃剤への規制に関してもいろいろ検討がなされるかもしれません。というか、検討はされているでしょうね。

今後の情報にも注意していきましょう。

難燃助剤として三酸化アンチモンが使用される

臭素系難燃剤では特に顕著だと思うのですが、難燃助剤として三酸化アンチモンが一緒に使用されます。

なぜ入れると効果的なのかは、別のHPなどに譲るとして、この三酸化アンチモンは臭素系難燃剤にはつきものだと覚えるといいかもしれません。

臭素系難燃剤は、その量を結構入れないと難燃剤として効果を発揮しません。最低でも10wt%以上は入っていないとダメなんじゃないかと思います。普通に20wt%程度入っている場合もあります。従って、その助剤である三酸化アンチモンもそれなりの量、数wt%以上入っていると思います。

管理人は、難燃剤の専門家でもなんでもないのでおかしな点があったらコメントしてください。

コメント

  1. しろいかもめ より:

    管理人さん、おはようございます。

    最近太平洋の向こう側のお客様から臭素系難燃剤について問い合わせを受けました。数十物質が羅列されていて、???という状況だったのですが、管理人さんの「規制がかかるかも」という一言に「そういうことなのか」と腑に落ちてしまってちょっとブルーです。日々お勉強ですね。がんばります。

    • OFFICE KS より:

      しろいかもめ様、コメントありがとうございます。管理人です。
      太平洋の向こう側ですか、それはなかなか面倒そうですね。数十物質というのは、あまりに広くとりすぎているような、もう全部聞いちゃえってところですかね。
      一度調べておいちゃうと後が楽かもしれませんけど、目の前の工数がねえ。
      頑張ってください。

  2. つくし より:

    臭素系難燃剤…基板製造の度に見る名前で馴染み深いですね。
    参考までに、当社使用の電子基板には臭素系難燃剤は8.5%含有、三酸化アンチモンは含有していませんでした。基板には合わないか、55%がガラス類だから不要なんですかね?
    ちなみに残りはほぼエポキシで、銅箔・レジスト・めっきが少し入ります。

    chemSHERPAでもその他の臭素系難燃剤(SN0015)扱いですが、もし規制されてしまったら阿鼻叫喚間違いなしですね。

    • OFFICE KS より:

      つくし様、コメントありがとうございます。管理人です。
      具体的な例を言っていただけると考えやすくなりますね。ありがとうございます。
      難燃剤の含有量は、元の素材の影響を多分に受けるはずです。

      ご指摘の通り、電子基板の場合は、元々の素材の難燃特性が高いので、難燃剤の含有量も少量でよくて、難燃助剤も必要ない場合が多いと思います。
      特にガラスエポキシ系は。

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