TSCAとは何か?(その2)

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TSCAとは何か?(その1)の前回は、管轄官庁や目的及び構成など基本的な部分のみを解説しました。

今回は、化学物質に関する登録や報告に関する内容となります。

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TSCAにおける化学物質の分類

TSCA(Toxic Substances Control Act)では、化学物質はまず大きく既存物質と新規物質に分けられます。

既存物質は、EPA(Environmental Protection Agency)が管理しており、商業目的のために米国で製造、輸入又は加工される化学物質の最新リストに含まれる化学物質のことです。

ちなみに最新版は、2023年8月16日版となっています。

一方、この化学物質の最新リスト(TSCAインベントリと呼ばれます)に含まれない物質は、新規物質という扱いになります。

新規物質は製造前届出(Pre-Manufacturing Notice: PMN)が必要

TSCAインベントリに含まれない新規物質をアメリカで商用で製造する場合は、少なくとも90日前までには製造前届(PMN)が必要です。届け出る相手は、当然EPAです。ここでの製造には輸入も含まれます。

ただし、裾切り値があり、年間の製造量が10t以上の場合です。それ以外にもいくつか免除規定があります。

ですが、以下の場合は事前の免除申請が必要です。それぞれさらに詳細があるのですが、成形品を取り扱っている限りにおいては関係ありませんので割愛します。

  • 少量免除(Low Volume Exemption: LVE) 
  • 試験販売に関する免除(Test Marketing Exemption: TME)
  • 環境放出または人への暴露が低い物質免除(Low Environmental Releases and Human Exposure: LoREX)
  • ポリマー免除

一方、事前の申請がいらないものもあります。

  • TSCAの「化学物質」定義から除外されているもの(TSCAとは何か?(その1)を参照のこと)
  • 混合物(ただし、混合物中の新規化学物質は届出が必要です)
  • 少量の研究開発用化学物質(ただし条件はあり)
  • 輸出のためにのみ製造される化学物質(ただし条件あり)
  • 不純物、商業目的に使用されない副生物、単離されない中間体等
  • アーティクル(液体、粒子はアーティクルとみなされません)

製造前届(PMN)に必要な情報は、化学物質の名前や用途情報、ハザード情報、人体・環境への影響など決められていますが、ここでは詳しく述べません。

製造前届(PMN)を行った後のプロセス

製造前届(PMN)がEPAに行われると以下のようなプロセスで手続きが進められます。

  • EPAは、製造前届(PMN)を90日以内に審査します。
  • EPAのPMN承認を受けた製造者または輸入者は、製造または輸入後30日以内に開始届出(Notice of Commencement of Manufacture or Import: NOC)を提出します。
  • NOC提出後、新規化学物質はインベントリーに既存化学物質として分類、収録されます。
  • ただし、リスクアセスメントを行なった結果、その物質に関するリスクを評価する十分な情報がなく、かつ①人や環境に不当なリスクをもたらすおそれがある、又は②相当な量の環境への放出若しくはばく露のおそれがある、と判断した化学物質の製造、輸入又は利用に対して制限又は禁止する場合があります(重要新規利用規則(SNUR)という規制に基づきます)。

重要新規利用規則(SNUR:Significant New Use Rules)

重要新規利用規則(SNUR)は、リスクアセスメントを行なった結果、その物質に関するリスクを評価する十分な情報がなく、かつ①人や環境に不当なリスクをもたらすおそれがある、又は②相当な量の環境への放出若しくはばく露のおそれがある、と判断した化学物質の製造、輸入又は利用に対して制限又は禁止する場合があるという規則です(根拠はTSCA(第5条(a)項(2)号)にあります)。

新規化学物質または既存化学物質をEPAの定める重要新規利用のために製造、輸入、または加工しようとする者に対し、その90日前までに重要新規利用届出(SNUN:Significant New Use Notification)の提出を義務づけるもので、化学物質ごとに必要に応じて決められます。

なので、JETROでは、SNURに該当するかどうかの判断は、届け出の前にEPAに確認することを勧めるとしています。

SNURによる規制は、新規物質にも既存物質にも行われます。規制の内容は製造・輸入の制限、用途制限、禁止物質により規制内容は異なります。

現在、SNURの対象になっている物質群は、1800程度あると言われています。

SNURの規則内容は複雑ですし、企業秘密になっていてCAS RNがわからないものも多いので、当該化学品製造会社に聞く、もしくはJETROが書いているようにEPAに相談することになります。

というかSNURの詳細の内容まで、管理人は完全に把握していません(知らなくても仕事ができたともいえます)。

化学物質を米国に輸出する方は、注意しておかなければならない規制です。

TSCAの説明は次回で終了

TSCAは、判り難い法律だと言われます。実際その通りだと思います。管理人もよく理解しているとは言い難いです。

ということで(^^;、TSCAとは何か?のシリーズは、次回であっさり終了です。次回は、話題になっている6条物質のお話です。

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化学物質規制
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