化審法の基礎:条約、法規いっちょかみ(その11)

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今回の条約、法規いっちょかみ(その11)は化審法です。

化審法そのものは、基本的に化学物質そのものを管理するための法律なので、本Blogを主にご覧になっているであろう成形品に関する化学物質を行っている方にはあまり直接的な関係はないかもしれません。

しかしながら、日本における化学物質そのものの管理という意味では、根幹をなす法律なので軽くだけ見ておきたいと思います(管理人も、実は詳しくは知らない法律です)。

化審法の目的は、化学物質の審査と製造、輸入、使用等について必要な規制を行う

化審法(正確には、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」)の目的が書かれている第一条は、次のようなものです。

第一条
この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し事前にその化学物質の性状に関して審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的とする。

ということなので、化審法の正確な名称が目的そのものを表しているとも言えます。

その名の通り、化審法による規制により日本において新規の化学物質は、基本審査を通らなければ市場に投入することはできません。

化審法の原点は、カネミ油症事件

化審法の成立(1973年)は、1968年に起きたカネミ油症事件に起因しています。カネミ油症事件は、カネミ倉庫株式会社で製造された食用油(コメ油など)にPCBが混入し、これを摂取した人が重篤な健康被害を受けた事件です。

PCBは安定性が高く、難分解性でかつ濃縮性がある物質です。こういった物質の健康被害に関する規制は当時考えられていなかったのです。

化審法は、化学物質に対して事前審査することを実行し、安定性が高く、難分解性で濃縮性がある物質による被害に対応した世界で初めての法律といってよいかもしれません。

残留性有機汚染物質に関するストックフォルム条約(POPs条約)が採択されたのは、2001年です。

化学物質は、性状によって分類される

化審法においては、化学物質は、その性状によって分類され、それに応じて必要な規制がされるとあります。では、どの様な物質の分類があるのでしょう。

以下の記述は、わかり易くするため法文そのものではないため、曖昧性があることにご注意ください。

第一種特定化学物質

第一種特定化学物質は、以下のような性質を持つものです。そして政令でどの物質か定められます。

  • 自然的作用による化学的変化を生じにくい、かつ生物の体内に蓄積されやすい
  • 継続的摂取で人間の健康を損なう
  • 継続的摂取で高次捕食動物の生息又は生育に支障がある

これに分類された物質は、特別に許可された用途以外、製造も輸入も禁止されています。

POPs条約で附属書A(廃絶)、附属書B(制限)に化合物が決定されると、日本では化審法の第一種特定化学物質として扱われるのが普通です。

第二種特定化学物質

第二種特定化学物質は、以下のような性質を持つものです。

  • 継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがあるもの
  • 継続的に摂取され、又はこれにさらされる場合には生活環境動植物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれがあるもの

更に、被害の恐れが認められる環境残留があるか化学物質

監視化学物質、優先評価化学物質

特定化学物質以外でも、化審法にはいくつかの分類があり、それぞれ規制がかけられます。

監視化学物質:自然的作用による化学的変化を生じにくい、かつ生物の体内に蓄積されやすいけれども、人の健康や高次捕食動物の生息や生育に支障があるかどうか定かでないもの。

優先評価化学物質:第二種特定化学物質に明らかに該当しないと認められず、かつ製造・使用量が多いため、環境において相当程度残留していると考えられ、リスク評価を優先的に行う必要があるもの。

新規化学物質を製造、輸入する場合は、届出し審査を受ける

化審法の第二章である第三条からは、「新規化学物質に関する審査及び規制」が書かれています。

新規の化学物質を製造したり輸入したりする場合は、届出をして、審査を受けなければならないと書いてあります。

ただし、製造や輸入の予定数量が少ない場合は審査の特例があることも書いてあります。

一般の化学物質に対してもやらなきゃいけないことはある

実際には、上に書かれたような特定化学物質や監視化学物質など、更には新規化学物質ではない一般の化学物質のほうが種類も数量も多いはずです。

化審法においては、それらの物質についても製造数量等の届出の義務(規制)があります。

ということで、経済産業省のHPには化審法のためだけの情報が載っているページがあります。

ということで、今回は化学物質そのものを製造・輸入する方に関係する、管理人は不得意な領域の化審法について、本当にいっちょかみでした。

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