2025年4月28日~5月9日にスイスのジュネーブで、ストックホルム条約第 12 回締約国会議(COP12)が行われ、その結果が経産省から発表されています。
今回は、その内容を見ていきましょう。
管理人は、かなり昔POPs条約に少しかかわったことがあるのですが、何せGWにぶち当てて毎回やってくれるものだから、その年のGWは何もできずに仕事をして終わるという悲しい思い出があります。毎回同じではなく少しは時期をずらすとか考えてくれよ。
COP12で附属書 A(廃絶)に追加されたのは3物質
今回のCOP12で附属書 A(廃絶)に追加されたのは、新たに3物質になります。それぞれ見ていきましょう。
クロルピリホス
この物質は、用途が殺虫剤ですので、当ブログの読者の方は大部分が関係ないと思います。
クロルピリホスは、有機リン系の殺虫剤で、日本においても白アリ駆除だけでなく果樹やゴルフ場などでも使用されてきました。
一応、化学式など一般情報を載せておきます。
一般名称:クロルピリホス
名称:チオりん酸O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)、チオリン酸=O-(3,5,6-トリクロロピリジン-2-イル)=O,O-ジエチル
化学式:C9H11Cl3NO3PS
分子量:350.6
融点:42~43℃
沸点:160℃
常温では、白色の結晶です。
附属書 A(廃絶)に追加されると、製造・使用が禁止されますが、この物質おいてはいくつかの用途において、製造使用について用途除外規定があります。
中鎖塩素化パラフィン(炭素数 14~17 までのものであって塩素の含有量が全重量の 45%以上であるもの)
この物質は、通称、単に中鎖塩素化パラフィンとかMCCPsなどと呼ばれています。
主に、金属加工油剤・難燃性樹脂原料等に使用されますが、可塑剤や布地の防炎、防水剤などにも使用されます。
この物質は、単体の物質ではなく混合物なのでいわゆる化学式などを決めることはできません。
この物質おいては多くの用途除外が存在します。まあ、それだけ便利な物質だということですね。
長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩及びLC-PFCA 関連物質(炭素数 9~21 までのもの)
この物質は、カッコ内に書いてあるようにLC-PFCAと略される場合が多いです。
主に、フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤等に用いられますが、一部用途に用途除外が存在します。
この物質も、単体の物質ではなく混合物なのでいわゆる化学式などを決めることはできません。
化審法 第一種特定化学物質への追加の審議が始まる
これらの物質が、 附属書 A(廃絶)に追加されることとなりましたが、日本においてPOPs条約の受け皿になっている法律は化審法です。
附属書 A(廃絶)に追加された物質は、化審法 第一種特定化学物質へ追加されます。ですのでその審議が行われることになります。
この際、日本においてこれらの物質の製造・使用などについて調査し、POPs条約の内容より更に厳しい規制がかかる可能性はあります。
POPs条約の締結国は、附属書 A(廃絶)の内容を踏まえて、自国の状況に応じてそれより厳しい規制をかけることは何ら否定されていません。
従って、EUにおけるPOPs規則が日本の規制内容よりさらに厳しくなることも考えられ、EUに製品を出す場合に影響があることもあり得ます。
このように、附属書 A(廃絶)に書かれた後、国内法ではどうなっていくのかということにも注意を払わなくてはいけません。
適用除外項目の延長について
今回のCOP12では、過去に附属書 A(廃絶)や附属書B (制限)にあった適用除外についての議論もありました。
「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及び PFOA関連物質」、「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)」については、泡消火薬剤用途での製造及び使用に関する適用除外については、2030年6月2日まで4年間延長されることになりました。
これは、日本で騒がれている水質へのPFAS汚染に対して、たとえ日本では禁止されたとしても、米軍基地では新たに追加される可能性を示しています。
また、「UV-328」についても、航空機用の各種材料に対しての2030年末までの使用の適用除外が追加されました。
次回のCOP13は、2027年
POPs条約の開催は、基本2年に1回です。次回は、2027年の4月にパナマで開催される予定だそうですが、4月中に終わるならGWを楽しめるじゃないですか、ずるい!
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